こんにちは、パリ在住フリーランスライターのnatsumi(@natsumiinparis)です。
7月5日〜8日に、パリで開催されたJAPAN EXPO 2018を取材しました。
JAPAN EXPOは、欧州最大の日本文化発信イベント。
2,000年から始まり19回目を迎えた今年は、
日本への観光をテーマにした
観光エリアが新設されました。
日本政府観光局を始め、
地方自治体や鉄道会社、航空会社など、
全部で18ブースが集結。
岩手県のこれまでのインバウンド対策をふまえ、
来場者の反応やPR方法、今後の課題を中心に
岩手県ブースの取材レポートを報告します。
岩手県のユニークなインバウンド対策
はじめに、他の県にはない、岩手県のユニークなインバウンド対策を紹介します。
出典:いわての10手
2016年4月に、岩手県盛岡広域振興局が開設した、
「外国人おもてなしまとめサイト『いわての10手』」
実際に宿泊施設やお店、温泉で使えるアイコンや
お礼メッセージのテンプレートが
ホームページから自由にダウンロードできます。
明日からできる10の対策には、
「一所懸命さを伝えよう」
「文字よりも絵で示そう」
など、地元の人もすぐに取り組めるような
トピックがまとめられています。
行政だけでなく、
岩手県民みんなでインバウンド対策をし、
岩手ファンを増やすためのユニークな取り組みです。
個人的には、3つ目の「自分から話しかけよう」がお気に入り。
旅先で出逢う人の印象は、
その土地の印象にも直結します。
言葉が不自由でも勇気を出し話しかけるだけで
立派なおもてなしになるということを、
いわての10手をきっかけに
もっと多くの日本人に知ってほしいです。
「世界で最も話されているのはブロークンイングリッシュです。」
というメッセージに、思わず「たしかに!」と呟いてしまいました。
VISIT IWATEという英語サイトも非常におしゃれで、
観光情報が美しい写真付きで詳しく掲載されており
日本人の筆者でさえ見ていてわくわくするようなホームページです。
工芸品と観光素材をPR
JAPAN EXPOのブースでは、主に工芸品と観光素材で岩手をPR。
2014年にパリで開催された、
「つながりに感謝 東日本大震災津波岩手県復興報告会」で、
日本酒や工芸品のPRが来場者に好評だったため、
その後も継続的に、工芸品を通じた岩手の魅力発信に力を入れています。
JAPAN EXPO 2018では、岩手県の伝統工芸品である
南部鉄器や浄法寺漆、秀衡塗を中心に展示。
美しい金箔の菱紋様など、鮮やかな色味から
視覚的に来場者を惹きつけていました。
工芸品のPRはもちろん、
まだ主要観光地ほど知名度がない地域にも
興味を持ってもらうきっかけ作りとして、
非常に効果的なPR方法という印象を受けました。
実際工芸品が目に止まりブースを訪れる来場者も多く、
工芸品に関する質問に答えながら
岩手の観光素材の紹介にも繋がっています。
出展者に話を伺うと、
ブースを訪れた来場者のタイプは二極化していることがわかりました。
リピーターですでに日本の知識がある人は
ゴールデンルート以外の次の旅先を探し、
岩手県ブースを訪れていた傾向にありました。
若者層は、ゆるキャラに注目して集まっていたのが印象的。
まだ日本には行ったことはないが
いつかは行ってみたいと話す人が多く、
まず岩手とはどこか、というところから説明した上で
パンフレットを用いながら観光素材を紹介していました。
沿岸部のPRが今後の課題
出典:岩手県観光ポータルサイト
現在は東北新幹線を利用し、
東京から温泉や花見、スキーを目的に
岩手を訪れる訪日客が多いのが現状です。
出展者によると、
岩手県のインバウンド対策における今後の課題は
沿岸部への二次交通の整備と観光資源のPRにあります。
2018年11月9日〜11日にフランスの
コルマールで開催される旅行博、
SITV Colmarへの出展や
2019年に岩手県沿岸部で開催される、
「三陸防災復興プロジェクト」を通して
国内外から沿岸部の魅力の発信を続けていきます。
まとめ:岩手県ブースの取材を通じて
岩手県ブースは、絶景のポスターだけでなく
実際その場で見て触れられる工芸品をきっかけに
観光素材のPRに繋げていたため、
より来場者の印象に残りやすく効果的なPR方法に感じました。
筆者が今年4月まで空港の訪日旅行センターで
コンシェルジュをしていた際にも実感しましたが、
正直岩手県を訪れるのはスキーシーズンを除いて
リピーターの台湾や香港からの個人旅行客が多数という印象。
しかし、今後の課題である沿岸部への誘客において、
比較的長期で日本を訪れるヨーロピアンなら
岩手の主要ルートだけでなく
沿岸部まで訪れる時間的余裕は、
アジア人よりあるはずです。
さらに、日本ならではの自然景観や伝統文化の体験を楽しみにし、
ゆったりした旅を好むヨーロッピアンにとって、
岩手県の沿岸部こそ魅力的な旅先になりえます。
二次交通の整備と観光素材のPR次第では
アジア人だけでなく
リピーターのヨーロピアンを中心に、
十分誘客が見込めるのではという印象を受けました。
県全体でインバウンド対策を行い、
海外からも積極的に魅力発信を続ける
岩手県の取り組みに
今後も注目していきます!